1『夢』


 「これで終わったのか?」 バルドはティルフィングを杖代わりにして立ちながら呟く
 「ああ、多分な」ヘズルは柱を背に預けそう答える。
 「これで・・・悪夢は終わったのか?」誰が言ったかは覚えていない・・・ だが、なにか・・・そう、何かが足りないのだ。

  どくん 私の心臓が鼓動を始める・・・

 「何が起きた!!」私は咄嗟にフォルセティを開く
 「わからん!!ただ・・・この魔力私達の・・・いえ古竜族の力すら」 ファラはそう言いながらもファラフレイムを開く
 「・・・しかし、何という悲しきそして、狂おしい魔力の流れ・・・」 トードはトールハンマーを開きながら嘆く
 「なんだ・・・この魔力の質は一体・・・」ヘイムは既に警戒を始めている。

  カチャ 誰かが入ってくる

 「誰だ!」 
 「私よ・・・」
 「パンドラ・・・無事か!!」
 「ええ、生きてはいるわロプトは?」
 「私達が封じた・・・だがまだ何かいる」
 「そうね・・・まだいるわ」
 「そうだな・・・パンドラ警戒して」
 「そんな事をしても無駄・・・」
 「それは一体?」
 「それは・・・うっ!!」パンドラは胸を押さえ始める。

  ドクン また!!

 「パンドラ!!」
 「来ないで!!オード私は貴方を殺したくない!!」まさか・・・
 「え?一体」
 「・・・グラーベって女の子の名前知ってるでしょ?」
 「知っている」
 「そうね・・・貴方は忘れるわけないもの・・・消えてしまった貴方の幼なじみ」
 「何で知っている?」
 「・・・私の母の名だから」それは明らかにおかしい
 「何を!」
 「そして・・・私の父の・・・アレを父と呼ぶのは嫌だけど その名はカオス・・・」
 「何者だ?」
 「神よ・・・とても強い力を持ったね、アレにとっては刻(とき)と言う事象は 無いも同然だから・・・」
 「・・・なんで此処に?グラーベは!!」
 「死んだわ・・・当然よ、神にタダの人の器で神の血を持った者を 創り出そうなんて・・・小さい器にそれ以上の物を置くなんて無理だもの・・・」
 「グラーベは最後になんと?」
 「私は聞いてないわ・・・と言うよりそんな事言えなかった・・・ 私が母に会ったとき母は・・・正気を無くしていた」
 「・・・」
 「多分私を作るときに壊れたんだと思う・・・アレと交わるなんて、 自殺するのと同義だから・・・」
 「なぜ・・・そんな事を・・・」
 「・・・力が欲しかったらしい」
 「え・・・」
 「母は貴方の事を強く想っていた! でも貴方はその力を得る前でも十分強くて・・・でも母は貴方程強くなかった」
 「・・・そして貴方が自由解放軍に身を投じた後に貴方を追った」
 「・・・私を?」
 「ええ、その時に大量の盗賊団に遭遇して・・・」
 「そんな・・・」
 「大切な物を奪われ・・・汚され、その時だった 一人の吟遊詩人が其奴らを片手で蹴散らした」
 「・・・何者だその吟遊詩人は?」
 「カオスよ・・・そして母に尋ねた・・・」
 「『力は欲しくないか・・・』 力を得てせめてオードの手助けをしたらどうだと・・・」
 「そして母はそれに答え深淵に連れて行かれた」
 「しんえん?」
 「深い、深い、淵よ・・・文字通りね、 そこで母は私を生んでしばらくして狂い死んだ」
 「そして私は母の変わりに力を得てこの地にいる」
 「私を愛したのは偽りだったのか?」
 「それ違う!!私は貴方の事を愛している!これは嘘じゃない!!」
 「・・・それともお前はグラーベの変わりだったのか?」
 「違う!!私は私パンドラよ!!」
 「・・・すまない」
 「いいの・・・私は糸の付いた操り人形(マリオネッテ) ・・・感情を持ったね・・・」
 「カオスはどうするつもりだ?」私はそれを聞きたい
 「私の魂を壊して、本当の操り人形にして・・・混沌の女王にしてから、 私を汚して・・・この世界ごと消すのよ」とても寂しそうにパンドラは呟く
 「・・・どうすれば」
 「何もできない・・・私は頑張って押さえているけど・・・もうそろそろ」
 「封じよう・・・」ヘイムは悔しそうに嘆く
 「何故?」
 「そのカオスはパンドラを触媒にしてしか出来ないはずだ・・・つまり」
 「封じれば?」
 「大丈夫なはずだ・・・」
 「だからって!! 仲間を封じないといけないのか!!」ネールはそれに反論する
 「いいのよ・・・ネール」
 「パンドラ・・・」
 「有り難う・・・でもそうするしか・・・ないのよ」
 「しかし!!」
 「私は大丈夫よ・・・カオスの血を引いているから」
 「・・・」
 「・・・最後にオード、私のこと愛してくれた?」
 「ああ」
 「だったら・・・せめて別れのキスを・・・」
 「駄目だ!私は離れたくはない!!」
 「お願い・・・」
 「・・・わかった」
 「その時だけ全力で押さえているから・・・」
 「ああ」そしてオードとパンドラは唇を合わせる。
 「ヘイム・・・お願い」
 「分かった・・・ナーガよ!!彼の者を封じよ!!」

  ガシィン そしてパンドラは封じられる

 「・・・こうするしかなかったのか?」 オードは叫ぶ
 「・・・」
 「何が古竜族だ!何が神器だ!! 惚れた女一人護れないで何の聖戦士だ!!」

  パチ パチ パチ 誰かの拍手が宮殿に響く

 「かくして英雄達を助けた献身的な女はその英雄達に封じられ 永遠の孤独にさいなまれるのでした♪」
  リュートを持つ吟遊詩人何処からともなく現れる。
 「貴様!!」
 「なかなか良い茶番を観させて貰った・・・ しかも良い意味で私を裏切ってくれる。 人間に介入するのはとてもいい暇つぶしになる」
 「貴様がカオス」
 「ああ、その通りだ」

  ブォン オードが斬りかかるがそれを難なく避ける

 「おや、おや・・・手荒い歓迎だね」そしてオードの後ろに現れる
 「なに・・・」
 「少し、おいたが過ぎるね・・・『吹き飛べ』」

  ドォン!! 突然オードが吹き飛ばされる。

 「ガハッ!!」
 「詠唱を無しで?」
 「『我思うこそ其は発するもの』思考具現化と言っておこう ソレを『吹き飛べ』と私が思ったから吹き飛きとんだのだよ」
 「しかし・・・無力だな古竜族程度の力で私を封じようなどと」
 「な!何だと!!」
 「まぁ・・どうでも良いことか・・・さて職君まずお礼を言っておこう 『面白い茶番劇を観させてくれてありがとう』」
 「風よ!!」私は躊躇なくフォルセティを放った
 「『消え失せろ』」

  パシュ

 「まぁ・・・良いだろう君たちには私の存在を君達の頭にそそぎ込んでいた 役立てたまえ、私の為にな・・・」
 「・・・」
 「さらばだ、クハハハハハハハハハハハハハハッ!!」


 マンスター 個室 深夜

「くっ・・・夢か」フォルセティと同化して何度目だろうか?また悪夢を観る
「一体どうすればいい?この過去を・・・」


ファイアーエムブレム異伝
狂神の娘

第4話「王と言う事は」


 2『母』


「ここは・・・何処?」そう・・・私の研究室だけど何かが違う・・・
「ここは貴方の心の中よリノク」私の声? そしてその声がした方には金色の眼をした私がいた
「貴方は?」
「私は貴方よ・・・いえ『元』私かしら?」
「私のオリジナル?」
「そうとも言える・・・でも私の娘ともいえる」
「・・・と言うことは貴方がパンドラ?」
「そう・・・貴方の身体に残っている壊れかけの魂」
「・・・何故私を生んだの?」
「繋ぎたかったから・・・私の記憶を」
「そうなんだ・・・パンドラ教えて・・・『私』は何者なの?」
「貴方は貴方よ私が生んで・・・自分で心を育て、 感情をえて『自分』を形成した」
「・・・でも分からない、自分が分からない」
「そうね・・・大抵の人はそうよそうやって自分を捜して 自分を作ってそして生きていく」
「・・・何で私に会いに来たの?」
「そうね・・・私はもうじき『壊れるから』」え?
「怖くないの?」
「そうね・・・怖くないと言えば嘘になるわ、でも・・・」

 ぎゅ  パンドラは私を優しく抱きしめてくれる・・・ 多分母が子供にする抱きしめ方なのだろう・・・とても優しかった。

「こんなに優しい、良い子になったから私は安心して消えていける・・・ 私の記憶を繋いでくれるそう思ったから」
「・・・『お母さん』」
「なに?」
「幸せだった?」
「ええ、とても幸せだった・・・大切な人が側にいてくれて・・・ 仲間がその周りにいて少し苦しかった時もあったけどとても・・・幸せだった」
「・・・そうなんだ」
「ああ、もうそろそろ・・・さようならしないといけないわね・・・リノク」
「・・・お母さん」
「なに?」
「私を生んでくれてありがとう」
「・・・本当に良い子に育ったわねリノク」と言ってお母さんは消えてしまった・・・

 リノクの研究室 朝

「さようなら・・・お母さん」そして目が覚めた。そして隣には
「・・・」ベットに倒れ込んでるシャナンがいた・・・ そう言えば慰めてくれたんだっけ・・・
「シャナン・・・朝だよ」
「・・・」シャナンはまだ起きない
「もしもしー」
「・・・」まだ起きない・・・こうなれば・・・実力行使?
「シャナン。起きないと実力行使するわよ♪」 そーっとシャナンの顔に自分の顔を近づけて・・・
「う、うん・・・リノク?」げっ起きた。
「お、おはよ・・・シャナン」あーはずかしー
「・・・」シャナンも顔赤いね・・・
「・・・」ううう、こーちゃくじょうたい
「・・・」シャナンも動こうにも動けないらしい
「・・・シャナン起きようか?」
「ああ、おはようリノク」そして二人とも起きあがる
「・・・昨日は有り難う」
「気にしなくてもいい、とにかく元気になって良かった」 また顔を赤くしながらそっぽを向いて話す・・・
「ふふっ」
「どうしたんだ?」
「別に」
「・・・しかし、リノク」
「んなに?」
「・・・何というか、かわい・・・じゃなくて!! ええい!!き、綺麗になったな」え?
「どんな風に?」
「何というか・・・なんか、や、優しい感じって! これじゃ訳分からないじゃないか!!」
「それは・・・多分お母さんに会ったからだと思う」
「リノクの母上に?」
「うん・・・夢の中だけどね」
「そうか・・・どんな人だったんだ?」
「そうね・・・とても綺麗で優しい人だった。 そして私に色々教えて・・・居なくなっちゃたんだ」
「・・・そうか」
「私は私だった」
「え?」
「お母さんは私の『魂』を生んで私はこの解放軍で 自分の心を育んでいった・・・そして今の私が居る」
「リノクは・・・強いな」
「ううん、強くないよ・・・頑張って強く『なれた』んだよ シャナンとかセリスとかいろんな人達に支えて貰って強く『なった』」
「そうかもな・・・」
「だから・・・私も支えてあげる」
「え?」
「シャナンが辛い事にあったら、私が抱きしめてあげる」
「・・・」
「だって・・・私は」 突然扉が開いた

『なんで!!何で私ではないのですか!!』

「フィン・・・」


 3『女として』


「フィン殿・・・」
「シャナン様は黙ってください!」
「・・・」
「地位ですか!!」
「違うわ!・・・シャナンは私を・・・ 私を『女として』見ていたわ、でも貴方は・・・ 私を何か壊してはいけない『もの』としてか見ていなかったのよ」
「それは!!」
「フィン・・・わかってる・・・ それが貴方の騎士道だと・・・でも私は・・・」
「言ってください」
「側にいてくれて・・・喧嘩して、 仲直りして一緒に進んでいける。そんな人が・・・」
「・・・分かりました。でも・・・誓わせてください 『貴方の騎士』であると言うことを・・・」
「ありがとう・・・そしてご免なさい、フィン」
「此方こそ・・・有り難うございました・・・私の女神」 と言ってフィンは去ってしまった・・・
「これで良かったのか?」
「うん・・・どっちにせよ誰かが傷つかないといけなかったから・・・ だったら出来るだけ早く、できるだけ優しく振らないと・・・」
「そうかもな・・・」
「私が出来るのはそれだけ・・・」

 マンスター 市街

「また振られたな・・・しかも同じ言葉で・・・」
「騎士とは誠実な者ほど向いているが・・・それ故に貧乏くじを引く」 城壁にもたれかかりながらヨハン公子が現れる。
「ヨハン公子・・・」
「残念だったなフィン殿」
「ええ」
「そんな時は空を見ればいい」
「空・・・ですか?」
「そうだ・・・あの広さ、全てを吸い込むあの青さ」
「それでも癒せぬ心は?」
「忘れればいい」
「それを忘れれないから、故に悩むのですよ」
「『悩む』事を忘れればいい・・・ そうすればまた前に向かって歩くことが出来る」
「・・・確かに、そうやって何度も苦しさを忘れたのですか?」
「かもしれないな・・・もっともこれは弟から教えて貰った事だから」
「ふっ・・・貴方は非道い人だ自分がした事ない事を他人に勧めるなんて」
「いいや、使ったさ・・・ 恋愛という物は振った方も振られた方も痛いからな」
「どれだけ・・・泣かしたんですか?」
「10人」
「意外と少ないのですね」
「言い寄って来たのはもっといたさ、でも真剣に恋をしたのは11人だけ」
「ラクチェ殿ですか?」
「いいや・・・もう婚約した。 この戦が終われば妻に迎えると言って出ていった」
「名前は?」
「マナ、うちの館でメイドをしている・・・とても気が利く女だ」
「では何故ラクチェ殿を?」
「うちの愚弟はこの手の話には弱くてね・・・ 好敵手がいれば少しは上手く行くと思ってね」
「でももし貴方に惹かれたら?」
「それはない」
「何故です?」
「あの眼には私は写っておらんよ・・・ 彼女の眼には愚弟かシャナン殿しか写っていない」
「ふむ・・・しかしシャナン殿には憧れでしか見えていないような」
「成る程・・・少々迂闊だったな・・・おや? 彼処にいるのはティニー公女とセティ殿?」
「目がいいのですね?」
「自信はある」

 マンスター市街

「セティ様!」ティニーが抱きついてくる
「・・・話は聞いていた。とても残念な事になってしまった」
「・・・はい、約束は覚えていらっしゃいますね?」
「ああ、覚えている忘れようも筈がない」
「・・・ならば護って下さりますね?」
「ああ、当然だよティニー」
「ああ、嬉しい、この様な素敵なお方に出逢えて・・・」
「私の胸で・・・思いっきり泣いていい、泣き疲れるまで・・・」
「はい・・・」


 4『策謀』


 マンスター迎賓館 昼

「セリスお疲れさま」
「ああ、有り難うリノク」
「どうだった?」
「うーん・・・あんまし良くない」
「良くない?」
「うん、レヴィンがゴネてね・・・」
「なんで?」
「うん・・・それがおかしいんだよ、 初めの同盟の件やらそこら辺はトントン拍子で決まったんだだけど・・・」
「だけど?」
「トラキアに送る増援について色々とね・・・」
「ふうん」多分私の事ね・・・
「リノクを加えるか加えないかでね・・・」
「私を?」
「そう・・・何でだろうね?」まぁ・・・私はアレの血を引いているからね
「所でお昼どうする?」
「そう言えばまだだね・・・」
「そう言うと思って待ってたのよ、 シャナンとイシュタルも待たせてるし、食べましょ」
「うん、いいね」

 マンスター 食堂街

「ご馳走様」
「ふふ、どういたしまして」
「良かったのリノク奢ってもらって?」
「貴方達の武器直したり、どうやって聞いたのか分からないけど トラキアの連中も直しに来たから・・・結構余裕はあるの、それに」
「それに?」
「若い子が遠慮したらいけないわよ」
「ふふ、そう言うことなら」
「この街は平和だね」
「そうね・・・」
「出来るのだろうか?」
「なにが?」
「僕たちがこの世界を平和にすることを・・・」
「どうだろうね・・・ でもそう言う風に考えることが出来るのは良いことだ思うわ」
「どうして?」
「そうやって、間違いを見つけて、 何処が悪かったのかをよく考えて、それを直していけばいい」
「・・・そうだね、ところでリノクはこの戦いが終わったどうするの?」
「私?・・・そうね聞きたい?」
「うん、聞いてみたいな」
「ふふ・・・秘密」
「あ、ずるい!」
「だってフェアじゃないわ、セリスは好きな人は出来たの?」
「ふふ、だったら僕も秘密」
「隣に居る女の子でしょ?」
「ええ!!何でわか・・・って!!」
「ふふ、こんなに簡単に引っかかるなんて」

「平和だな・・・」
「そうですわねシャナン王子」
「ああ、少しむず痒いがこういうのも悪くないな」
「ところで・・・リノクに何かしました?」
「いや・・・」
「おかしいですわね?だったら何であんなに綺麗になったのでしょう?」
「君もそう思うか?」
「ええ、前のリノクは綺麗と言うより、可愛い系の美人でしたもの・・・ でも今のリノクは『大人の女性』の美しさを持っている」
「なるほど・・・言い得て妙だな」
「何か知っているのですか?」
「なに・・・本人から聞いた話だが母に会ったらしい夢の中だが・・・」
「そうですか・・・とてもいい母親なんでしょうね」
「そうだな・・・」
「あら少し離れてしまったみたいですね・・・急ぎましょう」
「ああ」

 マンスター路地裏

「ここでいいかしら・・・」
「え?どうしたのリノク?」
「出てきたら?」
「何が出て来るんだい?」
「随分と下らない魔法で隠れていたわね・・・気配で丸分かりよ」
「・・・我の魔法を見破るか・・・」
「誰だ!!」
「大方ロプトの狂信者でしょ?」
「さすがは・・・神の血を引く者と言う訳か」
「何だって!!」
「セリス・・・声のトーン下げて」
「何で?」
「此処で戦闘するのは不味いわ・・・いくら防衛戦闘でもね」
「・・・そうだった」
「パンドラよ・・・我が軍門に下れ」
「誰のことを言ってるの?」
「「セリス!!」」
「ちっ!多勢に無勢か・・・」テレポートを唱えようとしている?なら!

 トス 首筋に朱刀を一発

「くぅ!」といって狂神者は気絶して倒れる。
「ふぅ・・・」
「・・・どうするの?」
「自警団に突き出すわよ、これで少なくとも事態は進みそうね」
「なんで?」
「・・・帝国が潜入している?」
「そうよ・・・そうすればトラキアに被害が及ぶわ・・・ 今のトラキアの被害は解放軍の被害でもあるもの」
「・・・確かに話が進みそうね」

 そして・・・この事件が双方に知れ渡ると ほぼトラキアの要求どおりに事が進んだ。


 5『変革の時』


 数日後 トラキア グルティア城

「お疲れさま・・・ケルベロス」
「アリガタキオコトバ・・・ワガアルジヨツギハイカガイタソウ?」
「もう戻って、お休みなさい」
「ギョイ」

 フォン

「・・・これが貴方の力か?パンドラ」
「いいえ、母の力ですわアリオーン王子」
「母の?」
「ええ、私の母のですわそれと」
「それと?」
「私の名前はリノクと言いますの先程名乗ったはずですけど?」
「失礼・・・リノク貴方は何を知っているんだ?」
「・・・過去ですわ」
「過去?」
「そう・・・ただの過去ですわ」
「・・・そうですか、このトラキアの土地を見ましたか?」
「ええ、見させていただきました」
「食物はろくに育たない、民を養うために王や騎士団が傭兵をしている」
「そう聞きました」
「貴方はこの土地をどう見ますか?」
「・・・ある意味豊かな土地だと思いますわ」
「それは一体?」
「逆の考えは出来ませんか? 物が育たない土地は物が埋もれていると・・・」
「・・・鉱物ですか?」
「ええ、私見が入りますが 鉱山として理想的な山があると思いますが・・・」
「なるほど・・・それを採掘して」
「ええ、それで民を養えるのでは?」
「しかし・・・この国にはそれ程の予算が」
「簡単ですわ・・・掘らせればいいのです」
「掘らせる?」
「ええ、例えばミトレスの商人に 何割かの鉱物を納めるのを条件に貸し出すのです」
「ふむ」
「そうすれば鉱山を勝手に掘ってくれるし、 鉱夫として現地の民を使うことになるでしょう」
「確かに良いことずくめですな・・・」
「そして・・・鉱脈が枯れる前に この国でも作物を取れるようにすればいい」
「・・・リノク殿」
「何でしょうか?」
「トラキアに来ていただけないでしょうか?」
「どの様な意味で?」
「文官としてそして意見役として」
「謹んでお断りいたしますわ、私はただ賢しいだけの女ですわ その様な女を仕官なされるのは・・・余りにも」
「しかし・・・」
「諦めろ、アリオーン」
「父上?」
「リノクとか言ったな?」
「ええ」
「少し話がある。トラキア城に来い」
「ええ、喜んで」

 トラキア城 会議室

「此処には我とお前以外誰も居ない・・・ 本音を喋って貰おうか?パンドラ」
「・・・成る程、まだ私を母だと思ってらっしゃるのね?」
「当然だ、あの地獄の番犬ケルベロスを喚んでいたのだからな」
「・・・母の魂は存在しません」
「どう言うことだ?」
「パンドラという概念は居なくなりました・・・ 残っているのはリノクというパンドラが生んだ魂と パンドラの身体とカオスの力と知識だけです」
「・・・」
「私は・・・もう過去には執着しないつもりです。 過去に捕らわれていては何もできないだから私は現在(いま)を生き、
 明日(みらい)を自分の足で進もうと思います」
「・・・お前は強いな」
「いいえ、強くありません。私には支えてくれる人がいる。 その人達が居るから強くなれたのです」
「そうか・・・あわよくばお前を 我がトラキアにと思ってはいたが・・・」
「申し訳ありません、それにはご期待に添えることは出来ません」
「分かってはいた・・・ あのような綺麗な眼をしている者達の集まりにいるのだからな」
「我々は変わって行くべきなのだろうな・・・」
「ええ、全ての事象には始まりがあり、終わりがあります。 そして変革もあります」
「礼を言う・・・お陰で闇も晴れた。後は精算するだけだな・・・」
「何か?」
「私事だ・・・気にするな、護衛を付けようお前達の所へ戻るが良い」
「はい・・・失礼いたします」


 6『共和国』


 トラキア城 トラバントの部屋

「・・・父上」
「来たかアルテナ」
「何のお話でしょうか?」
「お前の事だ・・・」
「私がレンスターの王女であったことですか?」
「知っていたか・・・」
「はい・・・マイコフが死に際に」
「そうか・・・お前はどうしたい?」
「私ですか?」
「ああ、俺の首を取るか?」
「何故そんな事を?」
「俺はお前の父を殺した男なのだぞ?」
「ですが、貴方は私を育ててくれました。 実の子と同じように・・・育ての親を私に殺せと言うのですか?」
「・・・そうか、お前も私を裁かんか・・・」
「え?」
「会談の後な・・・お前の弟に会った」
「リーフ王子に?」
「軽くあしらわれた」
「父上が?」
「ああ、憎くないのかと言ったがな・・・」
「・・・」
「『過ぎ去った事です。貴方にも訳があったのでしょう・・・ 私は責めません』と言いおった」
「・・・」
「数年ぶりに驚いた。奴がいればレンスターは安泰だろうな」
「何故この話を私に?」
「そうだな・・・聞いて欲しかったからだ」
「聞いて欲しかった?」
「ああ、お前はレンスターの王女でありながら トラキアで育ったお前にな・・・」
「お父様は私に何をして欲しかったのですか?」
「・・・お前がレンスターとトラキアを結ぶ橋になって欲しい」
「私が?」
「ああ、俺には夢がある・・・誰もが己の人生を全うできて、 そして自分のやりたい事を出来る、世界をな・・・」
「そんな世界」
「出来ないと思うか?」
「分かりません・・・でもとても難しいと思います」
「だろうな・・・少なくともその様な体制を作るのは 2、3百年はかかるだろ」
「・・・」
「そして、その第一歩として平和を作らなければならない」
「そうですね」
「力だけではなく、王族や民が一人一人で作り上げていく平和だ」
「それは理想です」
「しかし、理想が無くては人は動けん」
「・・・その手始めにそれを奴に話した」
「リーフ王子に?」
「ああ、『貴方もそうなのですか?』と言いおった」
「?」
「奴は俺と同じ理想を持っていた」
「・・・」
「俺は思ったよこやつらがこの世を変えていくんだと」
「そして・・・口約束ではあるがあることを約束した」
「ある事?」
「レンスター・トラキア共和国だ」
「な!」
「くく、驚いただろう?」
「・・・おどろくも何も呆れたとしか」
「だろうな・・・俺も最初は耳を疑った」
「と言うことは・・・提案者は?」
「リーフ王子だ・・・いや王子と呼ぶのは失礼かもしれんな」
「・・・何故その様なことを?」
「理想の一歩と言っていた」
「そうですか・・・」
「アルテナ・・・答えは出たか?」
「ええ、私はレンスターの王女に戻ろうと思います」
「ふふ、それからアリオーンと政略結婚か?」・・・読まれてる?
「な!お父様」
「お前がアリオーンを男として好いていたのは知っておったよ」
「・・・」
「好きにすればよい・・・お前のな」
「はい・・・」
「では・・・婿殿の答えを聞こうか?」
「え?」え、ええそれって
「・・・済まないアルテナ」お、お兄さま?
「・・・」
「アルテナ・・・私はお前の事を」
「・・・」
「私の后として迎えたい」
「お兄さま!!」その言葉を聞いて私はお兄さまに抱きついた。
「ふふ、これでトラキアは安泰だ・・・後は俺が過去の罪を精算するだけ」
「お父様?」罪を精算する?それは・・・
「アリオーンよ後は任せた。ゴフッ!」え・・・血を吐いた?
「父上!・・・これは毒!まさか!!」
「・・・嫌、お父様!嫌!」
「これで良いのだ。これでな」


 7『ミトレスへ』


 数日後 ルテキア城

「・・・これからですね、アリオーン王」
「ああ、セリス皇子ミトレスを解放し、帝国を倒して・・・父上の悲願を果たす!」
「ええ、行きましょうミトレスへ!!」


 続く




 後書き

作者「完成・・・残り、3話」
リノク「え?3話?2話の間違いじゃないの?」
作者「ふふ、読んで下さった人の希望によっては第3世代も予定している」
リノク「へ?」
作者「三通り予定している」
リノク「・・・マジで?」
作者「・・・ふふ、それもお楽しみだ」
リノク「そう・・次は?」
作者「第十章だな・・・」
リノク「どんな話になるの?」
作者「・・・出来るかどうか分からないが初めての試みをやってみようと思う」
リノク「そうなんだ。まぁ頑張りなさいな何事も最初の一歩からよ」
作者「ああ、次回FE異伝5話『ヤヌス』ご期待下さい」

 ヤヌス「・・・姉さんもうすぐよ・・・ 貴方にとても甘美で苦しい快楽の罠をあげる。 貴方の想い人と一緒に・・・」


 狂神の娘・第5話へ



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