| グラン歴 777年 7月 20日
作者・鵜楽氷水様 |
リーンの踊りに感銘を受けましたので、リーンに踊りを習いたいと伝えました。
リーンは戦いの最中では皆を勇気付けるために、戦いの間では皆を癒すために常に踊っています。
そんなリーンに頼み事をするのは悪いと思いましたが、思い切って頼んでみました。
するとリーンは嫌な顔一つせずに頼みごとを受け入れてくれました。
さぁ練習を始めるぞ!と思った矢先、リーンは私の服に手をかけました。
私はビックリして腰を抜かしてしまったのですが、リーンは笑って、
『そんな服で踊りなんてしたら、裾を踏んづけて怪我をしてしまうわ。私のスペアの衣装があるから、これに着替えて。』と、衣装を渡してくれました。ですがとても薄い布だったのでどのようにして着るか分からず、結局リーンに手伝ってもらいました。
リーンが、『恥ずかしくない?』と聞くと、
『はい。別に恥ずかしくはありません。リーンがいつも着ている服ですから。
ですが私はいつも裾の長い服を着ていますので…その……足元がスースーして慣れません。』と答えると、
『ユリアらしいね。ありがとう。足元の寒さはすぐ慣れるわ。』と言いました。
私は何故ありがとうと言われたのか分かりません。むしろこちらが礼を言うべきなのに…とリーンの優しさに頭が垂れる思いです。
そして肝心の踊りなのですが、私には才能が無いみたいで……
リーンはこんな事口には出しませんでしたが……私はどうやらリズム感に欠けているようで……
ステップをリズム通りに踏もうとすると、つまづきそうになってしまいます。
踊る事自体はとても楽しい事なのですが、これ以上リーンの時間を割く訳にはいかないので、リーンに衣装を返す事にしました。
リーンは、『ありがとう。ユリアと踊れて楽しかった。』と言ってくれました。
そしてリーンに踊りを習っている間に、リーンのお母様が踊り子だった事を教えてくれました。その時に、
『だからかな……私も踊りを踊れる。お母様の顔は覚えてないけど、これはお母様が残してくれた大切な宝物なのよ…』とリーンが言いました。
私がとても素敵ですね…というような事を言うとリーンは、
『あら、ユリアのシャーマンの能力も、血だって言うじゃない。ユリアもお母様がシャーマンだったんじゃないかしら……?』と言いました。
お母様が…シャーマン。そんな事、考えた事がありませんでした。でも、そうだとしたら本当の自分へと一歩近づけたのではないかと思います。 |
| グラン歴 777年 7月 28日
作者・鵜楽氷水様 |
ラクチェとスカサハは、本当に凄いのです。
流星剣という、凄い技を持っています。
何でも、相手が一手繰り出す間に、こちら側が五回も切り込める技だそうです。
私も使えたら良いな…と思い、二人に習ってみたのですが……
真剣が持ち上がりませんでした。
まさかこんなに重いなんて……いつも真剣で戦っているラクチェやナンナ、パティ、フィーがそんなに力持ちだとは知りませんでした。
剣が持ち上がらなかったので、魔道書を使って試してみたのですが、さっぱりです。
『技に心をのせる…』やはり私に剣士の素質は無いのでしょう。さっぱり分かりません。
けれど力はあったほうが良いので、『これからは暇な時は杖で素振りをしようと思います』とレヴィン様に伝えると、
『いざという時がいつ来るか分からないのに、暇な時に無駄な力を使うな。』と怒られてしまいました。
その、「いざという時」のために、皆を守るためにと思った提案なのですが……
私の我侭よりも、レヴィン様の言う事の方が尤もなので素振りは止めにしました。
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| グラン歴 777年 7月 30日 |
アルスターの城下町に、女性みんなで行きました。
ラナさんは杖の修理、ラクチェさんは闘技場へ。ナンナさんは紙など連絡用物資の調達、
フィーさんは天馬の食料を、パティさんはシャナン様への贈り物を買うのだとか。
太陽と青空の下、露店に売り込みの声が元気よく響いていました。
みんな、解放を歓迎しているようです。
仲間のみなさんも、つかの間の平和を楽しんでいました。
「仲間」。この言葉を使う日がくるなど、少し前には考えられませんでした。
少し前のわたしなら、用事がないならば城に閉じこもっており、
みなさんと一緒に町を歩いたりはしなかったでしょう。
でも、今はそうではありません。
みなさんの会話を聞き、無言で路地を歩くだけのひとときが、
とても充実したものに思えました。
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| グラン歴 777年 8月 10日 |
わたしの能力…眠っていた、シャーマンの力。今日、思いがけない形で目覚めました。
しばらくみんなで進軍したところで、わたしは変な気配を感じました。
邪悪な気配と、不思議な気配…、周囲が急に寒くなったようでした。
セリス様にそのことを知らせようとしたところで、ふっと意識が遠くなりました。
気がつくと、ラナさんに抱きとめられていました。
誰かがわたしの身体に降臨し、伝えていたようです。
イシュタルと戦わないように、と…。
シャーマンの能力。わたしに降りてきた、何かの気配。イシュタル、という名前…。
何か大きなものが、わたしの心に引っかかります。
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| グラン歴 777年 8月 12日
作者・鵜楽氷水様 |
今日はティニーに三精霊の扱いを教えてもらいました。
私もシャーマンとして修行を積み、そろそろセイジへの昇格を許されそうだからです。
ですがそのためには、三精霊の使役を学ばなければなりません。
風の魔法が一番苦労しました。
雷の魔法はティニーが詳しく教えてくれたので、風魔法よりも早く飲み込めました。
炎の魔法は…ティニーが教えるまでも無く、何故かあっさりと扱う事が出来ました。
ティニーは、『ユリアはバーハラの近くでレヴィン様に拾われたっていうから、ひょっとしたらヴェルトマーの血も入っているのかもしれませんね。』と言いました。
シャーマンの娘で、ヴェルトマーの血を受け継いでいて……私の素性が少しづつですが、明らかになってきているような気がします。
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| グラン歴 777年 8月 23日 |
パティさんのお兄さん、ファバルさんとはじめて会いました。
ファバルさんは伝説の弓を扱える戦士で、少し恐そうでした。
ですが、そのイメージは間違っていました。
近くの村を訪れると、大勢の子どもたちがファバルさんとパティさんとの
別れを惜しんで泣いていました。ファバルさんが元気付けると、
最後には子供たちが手を振って、元気で帰ってきてね、約束だよ、と
叫んでいました。
あとで、ファバルさんから話を聞くことができました。
ファバルさんたちは、孤児院を運営していたのです。
パティさんも、それに協力していたのでした。
傭兵のファバルさんと、盗賊のパティさん。お二人は、平和な世の中なら
許されないかもしれない職で、お金をかせいでいます。
昔のわたしなら、お二人を批判していたかもしれません。
ですがそれは、身寄りのない子どもたちを養うためだったのです。
きれいごとだけでは、救えない命もあるのです。
自分のやりかたで、できる範囲のことをする。
わたしはお二人から、そのことを学びました。
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| グラン歴 777年 8月 28日 |
凄まじい戦いを目にしました。
フリージのイシュタル王女が、黒騎士と呼ばれるアレス様と戦ったのです。
伝説の魔法・トールハンマーと魔剣ミストルティンの激突。
これが、伝説の武器…。
恐ろしいほどの力がはじけ、わたしはただ見ているしかありませんでした。
互いに消耗し、引き上げようとしたところ。
イシュタル王女の背後に、赤い髪の若い男が現れました。
遠目で見ていたので、よくわかりませんでしたが、
その姿を見た瞬間、わたしの背筋に言い知れない震えが走りました。
後でティニーさんから、あれはユリウス皇子だと聞きました。
その名前を聞いて、わたしはあの人を知っている、という
確信めいた予感を抱きました。
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| グラン歴 777年 9月 17日
作者・鵜楽氷水様 |
今日ほど胸が熱くなった日はありませんでした。
私は先日不注意で敵に峰打ちをされ、捕虜として虜囚の身となりました。
城の地下牢へと放り込まれ、昼も夜も分からないままでした。
皆が助けに来てくれると信じていましたが…やはりどこか不安で…空虚な日々を過していました。
もう何日目になるか分からない時に、今まで暗かった地下牢に急に光が差したのです。
もう動く気力もあまり残っていないような状況でしたが、全身の血を奮い立たせるように身を起こしました。
すると、目の前にラナやラクチェ、リーン等、あぁ、全員の名前を書けば今日のページが埋まってしまうほどの人がいました。
フィーが牢屋の冊を揺らして私の名前を呼んでくれていたのですが、そこにパティが溢れんばかりの威厳をかもし出しながらフィーを手で払いのけました。
『ユリア、辛かったでしょ。今出してあげるから…もうちょっと待っててね。』
そう言うとパティはまるで魔法の様に鍵を開けてしまいました。
そして私が牢屋を出る前に、ナンナやティニーが私のいた牢屋の中に入ってきました。
汚い、暗い場所なので入ってきてはいけない、と思ったのですが、上手く言葉が出ません。
二人の肩を借りて私は牢を出ました。
この時の気持ちは何と表現したら良いのか…筆をとりながら今考えています。
確か今日と似たような状況が…「いばら姫」にあったような気がします。それと照らし合わせて考えてみると……
ぴったりな言葉が見つかりました。
そう……私は皆を愛しているのです。
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| グラン歴 777年 9月 24日 |
マンスター城は、わたしたちより前に、別組織により解放されていました。
その組織を率いるセティ様に、セリス様とともにお会いしました。
セティ様の案内で、城下町を歩きました。
解放された町には元気がありますが、子どもが少ないのが気になりました。
セティ様が言うには、ロプト教団の「子供狩り」により、
みな無理やり連れ去られてしまったそうです。
子どもたちの多くは死ぬことになり、他はロプト教の一員となるのだとか。
子をさらわれた親たちは、ただ嘆くことしかできませんでした。
子を守るために単身ロプト教団に戦いを挑み、死んでいった親たちも数多いといいます。
わたしの中にはじめて、「怒り」と呼べる感情がこみあげてきました。
ロプト教団のすべてが根本から悪い人間だけというわけではないでしょう。
しかし、この町で彼らが行ったことは、許されるとは思いません。
セティ様とともに、ロプト教団と帝国と戦おう、とあらためて思いました。
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| グラン歴 777年 9月 30日 |
わたしたちは、トラキア領内に侵入。ミーズ城近くの村を解放しました。
しかしそこに待っていたのは、人々の怒りと恨みの声でした。
わたしたちが甘かったことを、思い知りました。
…ここは帝国領ではなく、トラキアの土地。わたしたちは、侵略者と呼ばれたのです。
セリス様は、レヴィン様やオイフェ様たちと軍議を行い、
激しいやりとりがなされました。
「わたしたちの敵は帝国だ。トラキアとは戦う理由が無い!」
そう主張するセリス様。セリス様はわたしと同様、各地の村人たちを救いたいと思って
戦ってきたのでしょうか。
わたしも、セリス様の気持ちはよくわかるのです。
敵の兵士を殺しても、人々の喜びの声で救われる。そんな気持ちで戦ってきたのに、
民衆にまでそっぽを向かれては、わたしは何のために戦うのか分からなくなります。
「少なくとも、何度も和平の使者を送らなければ、納得できない」
しかし、レヴィン様は頑として論を曲げませんでした。
「我々は、トラキアを倒さなければならない。そのために、今すぐ
ミーズを奪うのだ。
第一の理由は、リーフ王子たちの戦力と一致団結して戦うことが必要不可欠であり、
彼らはトラキア打倒を最大の目標としていること。
第二に、かつてレンスターのキュアン王子が倒されたことからも分かるとおり、
彼らに自由な行動を許すと必ずこちらの不利な局面で襲われる。
トラキアを討って後背の不安を断ち切らない限り、帝国との戦いで勝利はない。
第三に、このミーズこそがトラキア半島の中心に位置する戦略の要衝であり、
絶対にトラキアから奪わなければならない場所だからだ。
ここを固められては、こちらからはトラキア本土を攻められず、
敵の竜騎士にはアルスターもレンスターも襲われる」
電撃作戦によるミーズの奪取は絶対に譲れない戦略。
このレヴィン様の主張に反論できる人は、誰もいませんでした。
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| グラン歴 777年 10月 3日 |
ミーズ城を占領しました。
激しい戦いの末、敵の守備隊は一人残らず討ち死に。
抵抗する民兵…いえ、そう呼ぶのもためらわれる、ナイフを持っただけの
市民たちも、大勢を捕らえ、やむをえず殺した市民も多数にのぼりました。
セリス様は、この戦いに正義があるのかと、とても苦しんでいます。
リーフ様は、お父上の仇を討つため、意気盛んです。
その他の人たちは、それぞれの考えを持っているようです。
わたしは…。
これ以上、書くことができません…。
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| グラン歴 777年 10月 10日 |
リーフ様が、トラバント王を討ちとり、お姉さまであるアルテナ様との
再会を果たしました。
「父上、母上、見ていますか…」
フィンさんとナンナさんとともに立ち、光の剣を天に掲げるリーフ様の
姿は、目標をなしとげた人の素晴らしさを示していました。
トラキアのハンニバル将軍は、世界の情勢を考え、わたしたち
解放軍につくことを選んでくれました。
人々の怨嗟の声は止みませんが、トラキアに侵攻して
得たものもあるのだと思います。
何を重んじ、何と戦うのか。
同じ解放軍でも、よって立つものは人によって違います。
わたしにとって何が大切なのか、ずっと考えてきました。
でも、結論は出ません。
それは、わたしが記憶を失っているからだと思います。
わたしにとって大切なものは、何なのか。
それを確かめるには、家族、故郷…過去の記憶が必要だと感じます。
それがはっきりしないから、わたしは迷うのかもしれません。
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