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その日。かんかんと照りつける太陽の下。 解放軍の戦士たちはバーハラの野原にある陣の前に整列し、 緊張した面立ちにじっとりとした汗をしたたらせていた。 バーハラ城への出陣に先立ち、これからここで、 解放軍の盟主・セリスによる演説が行われるのだ。 トラキア解放の若き旗印、リーフ。力強き黒騎士、アレス。 風の勇者、セティ。他にもファバルやアルテナなどといった 伝説の武器の使い手をはじめ、そうそうたる顔ぶれが ずらりと揃っている。 この先には、この世界を闇に包まんとしている元凶であるユリウス皇子と、 恐るべき実力を持つ十二魔将が待ち構えている。解放軍の総力を結集し、 全力で当たらなければならない、まさしく最終決戦である。 やがて、彼らの前に、さっそうとセリスが姿を現した。 彼の隣にはユリアがそっと佇み、レヴィン、シャナン、オイフェといった 解放軍の重鎮たちが脇を固めている。 伝説の聖剣ティルフィングを腰に佩き、威風堂々。 引き締まった厳しい表情で、セリスは仲間の戦士たちを見渡した。 個性派ぞろいの解放軍の戦士たちをまとめあげる、 驚くべきカリスマと指導力を併せ持つリーダー。 そのセリスによる演説とはいったい、どのようなものであろうか? 皆が緊張の面持ちでセリスを見上げる。 ごくりと唾を飲む音が聞こえた。 そして…。 セリスは突如として、片手でユリアの肩を抱きしめ。 解放軍の皆に、熱い魂のこもった演説を始めたのである。 諸君 私はユリアが好きだ 諸君私は ユリアが好きだ 諸君 私はユリアが大好きだ 紫の目が好きだ 銀髪が好きだ 白い肌が好きだ サークレットが好きだ ローブが好きだ 外套が好きだ 杖が好きだ サンダルが好きだ 無口なのが好きだ 健気さが好きだ 遅い会話が好きだ おとなしいのが好きだ 芯の強さが好きだ まっすぐな生き方が好きだ 草原で 街道で 森で 荒地で 城で 村で 砂漠で 雪原で 山で 海で ユグドラルで見られる ありとあらゆるユリアが大好きだ 記憶を失ったユリアが私たちと出会い ともに歩み始めるのが好きだ 瞳を潤ませて 「セリス様…」とか細くつぶやいた時など 心がおどる 追撃連続見切りを持ち 実は最前線でも戦えるほどの強さが好きだ 敵兵を静かに睨み リザイアで瞬時に干からびさせてしまった時など 胸がすくような気持ちだった 光魔法に杖その他 神秘的な能力をたっぷり持っているのが好きだ いきなり母親を降臨させ 「イシュタルと戦ってはなりません」と深みのある声で呟くときなど 感動すら覚える 孤独に生きてきたのに 人との絆を大切にするところも素晴らしい さらわれた後に再会した父に 「おやさしい人です」と告げたその優しい声に心動かされた 長い時間をかけて隣接させ 恋人同士になった後の会話などはもうたまらない 城で出迎えてくれたユリアに 「少しさびしくて…待っていました…」と言われた時など 絶頂すら覚えた 途方も無い運命の荒波に 敢然と立ち向かっていくのが好きだ 誰よりも理解しあっていたはずのユリウスを その手で殺すことを決意する静かな瞳は とてもとても悲しいものだ 戦争が終わっても 自らのしあわせを求めないのが好きだ 恋人ができても ただ一人バーハラに残ってつぐないを続けさせてしまうのは 屈辱の極みだ 諸君 私はユリアを 聖女のようなユリアを望んでいる 諸君 私に付き従うユリアファン諸君 君達は一体 何を望んでいる? 更なる萌えを望むか? 情け容赦の無い 竜の血の戦いを望むか? お約束の限りを尽くし ユリアファンの魂を焦がす 砂を吐くような愛を望むか? 「ユリア!! ユリア!! ユリア!!」 よろしい ならばユリアだ 我々は満身の力を込めて 今まさにほとばしらんとする熱い魂だ だが この呪われた血の絆の禁忌に 何百年もの間 堪え続けてきた我々に ただのユリアではもはや足りない!! 未来を!! ユリアが心から望むしあわせな未来を!! 我らはわずかな勢力 三十人に満たぬ解放軍に過ぎない だが諸君は 一騎当千の古強者だと 私は信仰している ならば我らは諸君と私で 総兵力百万と一人のユリア愛者軍団となる ユリアを忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう 記憶に残し 愛情を語り 伝説を見せて 思い出させよう 連中にユリアの強さ可愛さを 思い出させてやる 連中に我々の 煮えたぎる情熱を叩きつけてやる ユグドラル大陸には 奴らでは思いもよらぬユリアの魅力がある事を思い出させてやる ユリア軍団の愛の力で 世界を魅了し尽くしてやる 「伝説の光魔法ナーガ装備完了!」 「回復・カリスマ・踊り子軍団配備開始!」 「ユリア親衛隊陣形確認!」 目標 グランベル帝国中枢 バーハラ城中心 ユリア軍団布教作戦 状況を開始せよ 征くぞ、諸君!! 「……………」 …煮えたぎる独りよがりな情熱と、ほとばしる個人的な愛情。 暑っ苦しすぎる演説を聞くともなく聞き終えた戦士たちは、 一人残らず砂を吐きまくってその場に崩れ落ち、 二度と立ち上がることはできなかったという。 だが、セリスはユリアと二人っきりで最終決戦の場に臨んでいちゃいちゃを続け、 それはそれで問題なかったりするのであった。 (あとがき) えーと…。これは、正確に言うと小説ではありません。 「ヘルシング」(平野耕太、少年画報社ヤングキングコミックス)という 作品に登場する、「諸君 私は戦争が好きだ」で始まる演説をもとにした パロディーなのです。 元ネタの文章は、検索などでお調べくださいませ。 この文章は、その強烈なインパクトによって 多くの人の心に影響を与え、また熱い思いを語るパロディーも 多数実行されてきました。そこで、私はこれをユリアで やってみようと思い立ちました。 …私こと、バカ殿セリス様が、軍のみんなの前で行う演説。 もし、自分の思いを、効果的に、余すところなく語るのが演説であれば、 私ならばきっと、こういう内容になるのではないでしょうか。 戦意高揚どころか、「やってろよ貴様」ってな反応が返ってくるのは 間違いないところですが。 この演説を聴いて、ユリアはどんな気持ちだったのでしょうね。 では、今回はこれにて失礼します。 |