「青玉の薔薇」あとがきこんにちは。小説の発表はずいぶん久しぶりになります。 「しあわせの樹」の2章以来と考えると…1年ぶり以上でしょうか。 ご無沙汰しました。 この作品のきっかけは、解放軍掲示板にて、 磯辺巻きさんとOSさんが「青い薔薇」についての書き込みを してくださったことでした。あらためてお二人に感謝します。 2004年6月末。遺伝子組み換え技術を用いた「青い薔薇」を 作ることに成功したというニュースが報道されました。 実際にはまだ完全な青とは言いがたく、薄紫、もしくは青白い 薔薇といったところでしょうか。 青い薔薇は、自然界にはない存在であり、 普通の薔薇では青色の色素を作るための遺伝子が機能しないといわれています。 しかし人はあきらめることなく、工夫を凝らし、生命に手を加えることまでして、 青い薔薇という夢に少しずつ近づいています。 あなたは青い薔薇を見て、何を感じるでしょうか。 赤や白とは違い、その涼やかな色あいからは、均整の取れた 透明な美しさだけではなく、何かこの世ならざるものを見ている かのような、かすかな寒さが感じられるのは、気のせいでしょうか。 一方で、青い薔薇自身のことを考えたとき。 人の手によって生まれたこの植物は、そんなことを気にせず、 ただ沈黙のうちに花を咲かせ、生きているのです。 青という宿命を背負って生まれたのは、この花の決めたことではありません。 それはさながら、光と闇という宿命を持たされた、ユリアとユリウスの ことを連想させます。 セリスとユリアは、青い薔薇を植えることを選びました。 神の手によらざりし存在を加えた薔薇園の波乱含みの未来は、 竜の血の呪いを抱えつつ、それを受け入れて歴史を歩むユグドラルの 未来の縮図のようにも思えます。 その生命自身だけでなく、そのような異質な生命を生み出す側の 自覚と責任がとても重要であることは、言うまでもないことでしょう。 セリスとユリアの、次世代に対する責任、ということに、つながっていきます。 作品として見ますと、やや前段部分が長いのと、 全体の筋が予想される範囲におさまり、驚きに乏しいのが欠点でしょうか。 小説書きは久しぶりなこともあり、文章力にまだ自信がついていません。 薔薇をはじめ、太陽や月光などの綺麗な情景が多く出てきますので、 それを美しくカラフルに表現することを目指しました。 核となる色、「青」については、いろいろな描写を試みました。 深い海。雨季の花(あじさい)。高い空。夜の月光。 青玉(サファイア)もあり、これをタイトルに選びました。 「ブラウローゼン」というドイツ語タイトル、 「Sapphian Rose」という英語タイトルも考えましたが、日本語のほうが 分かりやすいかと思いまして。 そして最後に。青は、セリスを象徴する色でもありますね。 重い運命を抱える命という命題。 いつかセリスとユリアは、正面から向き合うことになるでしょう。 そのときまではしばらくお待ちいただくとして…、今回はこれにて失礼します。 また次回作にてお会いしましょう。 |