もう、私がいたユグドラル大陸には戻ることは出来ない・・・
私はどうすればいいのだろう?
私は何を出来るのだろう?
分からない・・・
でもやるしかない、幸せになって見せないと

それがお母様と私の絆だから・・・

ノルンの日記から抜粋



 ファイアーエムブレム異伝

第二部『母親として』

第二話『MOON&SUN』


 1『彼女の状況』

 昼 アグスティ城 中庭

「はぁ・・・疲れた」
 本当に疲れた。久々に庭で落ち着いて麗らかな陽気に当たる事が出来たと思う。
 連日イムカ王には会議の秘書に駆り出されるわ(これは仕方ないけど)
 それから解放されるとアグストリアの各諸侯 のご子息とのお話(三十路過ぎの人との縁談は勘弁して欲しい)
 やっと解放されると今度は兵士の人達が殴り合いながら
 私をデートに誘ってくるし(これはこれで少しは楽しかったりする)
 何とかそれを切り抜けると御暇なご婦人達が私が知っている土地の話とかを聞きに来る。
 これに週2回あるダンスパーティをプラスすると流石に勘弁して欲しいと思ってしまう。
「もうなれましたか?」
 そう連日のハードスケジュールを思い返していると私に声をかけてくれる人物がいる。
「エルトシャン様?お陰様でもう慣れました」
 恐らく、イムカ王に用があったのだろう。
「そうですか・・・少しお疲れに見えたので」
「ふふ、確かに、少し疲れていると思いますわ」
「と言うと?」
「ほら?」
 私は視線で隠れて私達を見ているいるメイドをバレないように目で示す。
「・・・成る程」
 エルトシャン様は納得と言った感じで頷く。
「ご婦人方やメイドさん達は恋愛のお話がお好きですから・・・」
 私も人の事は言えない、セリス閣下とイシュタル王妃の馴れ初めを閣下のご子息と一緒に興味津々で聞いていたから・・・
「そうですね、少し休める場所があるのですが、どういたします?私でよければ」
 その申し出は有り難いことだと思う、城の中で日向ぼっこも悪くないけれど外に出るのも悪くないと思うし、
「・・・エスコートお願いいたしますわ」
 なにより、これはデートと言う奴なのでは?
「謹んでお受けいたします」
 そしてエルトシャン様は私に手を差し出し、私はその手に捕まりベンチから立ち上がった。

 昼 ノディオン周辺 浜辺

「ここです」
 エルトシャン様と一緒に馬に乗り(つまり相乗りで)連れられてきたのは浜辺だった。
 確かにいい場所だ。
 心地よい春風が吹き、潮騒が心地よく聞こえ日々の疲れが少しずつ消えていくようだった。
「とても、いい場所ですわね」
「そう言って貰えると私も嬉しいですよ」
 少し顔を赤くしながらエルトシャン様はそう言ってくれる。
「ふふ、後で何かお礼をしなくてはいけませんね」
「お礼ですか、いりませんよ私はただ単に私が連れて来たかったから連れてきたまでで」
「そうですか、少し残念ですね」
 そう言いながら、私は乾いたの流木に座る。
「アグストリアはいい国ですね、私が生まれた国と同じぐらい・・・」
 実際気候は恵まれていると言ってもいいだろう。シレジアやトラキアよりかはずっと。
「貴方の生まれた国はどんな国だったのですか?」
「そうですね・・・草原の国です。夏でも涼しい風が吹き、秋は少し冷たいけど紅葉がとても綺麗で
 冬は綺麗な雪が降って暖かい物を飲みながら雪を見るのがとても好きでしたわ」
「とても、いい国なのですね。私もそんな国を作れるのでしょうか?」
 エルトシャン様は私の隣に座り、少しうつむきながら話し始めた。
 ああ、成る程この人は私に相談をしたかったんだ・・・
「大丈夫ですわ、貴方なら出来ます。家族を大切にして、民を大切にして優しく強くなれば」
「難しいですね・・・」
「いいえ、貴方はもう優しさ持っているのではなくて?」
「優しさを?」
「ええ、優しさとい物は誰もが持っている物だと思います。
 だけど誰もがそれを上手く使えないだけ、それを上手く使えることが大事だと思います」
 そう、お母様もそうだった。厳しかったけどやさしい所は優しくて、私はあんな人になれたらいいなと何度思ったことか、
 いや、今でもそう思っている。
 きっと超える事が出来ない大きな壁。
 そして、いまだに追いかけている母の背中。
 私は母を超える事ができるのだろうか?
「そうですか・・・有り難うございます。悩みを聞いてくれて」
「ここに連れてきてくれたお礼です」
 といって私は立ち上がろうとしたときだった。
 視界が急に暗くなり、平衡感覚が無くなっていき・・・
「あら?」
 私は倒れた。
 ああ、いつものが久しぶりに来わ・・・
 そう思いながら私の意志はブラックアウトしていった。
 誰かに受け止められる感覚を感じながら・・・・

 ノディオン城 客室

「ここは?」
 私は周りを見回す、見たところ特に変わった場所ではなく・・・

 ギュ

 え、誰かいたの?
「よかった・・・命に別状はなくて」
「ええええええ、エルトシャン様?」
 何で私を抱きしめているのだろう?
 確か・・・浜辺まで遠乗りに出かけて、ああ確か倒れたんだ。
「私は大丈夫ですわ、エルトシャン様」
「もう、目の前では誰も倒れて欲しくなかった」
 え?
「私の母はとても病弱で私を生んだ後、私が物心とついた時に死んでしまいました」
「・・・」
「あの時の事が忘れられないのです、母上が倒れる所が・・・」
「エルトシャン様。私は貴方のお母様ではありませんよ」
 そう、私はエルトシャン様のお母様ではない、私はノルンなのだから
「分かっています。でも・・・無事で良かった」
 といいながら抱きしめ続けるエルトシャン様の頭をそっと抱きしめ
「大丈夫ですよ、私はここにいます。だからもう心配ないから」
 と言って私は彼の頭をなで続けた・・・


 2「好きという意味」


 夜 ノディオン城 ラケシスの部屋

「きょーてきだわ」
 さっきメイドのシェリーに聞いたけど、かなり仲良くしてたと言ってるし・・・
 むむむ、どーしようかしら?らいばるって奴よね。
 どーみても年も胸もスタイルもぜーーーーーーーーーんぶ!!
 負けてるわね・・・(16なのにあの反則的なスタイルって何よ!!背も高いし!!)
「うーむどうすればいいのかしら・・・」

 コンコン

「誰です?」
「私です。シェリーです」
 どうやら偵察部隊が戻ってきたみたいね。
「入って」
「失礼いたします」
「それで首尾は?」
「あまりよくない情報が」
 うむむむ・・・
「どんな?」
「今日お泊まりなるらしいですよ」
 え?
「なんで?」
「聞いた話ですとお二人で遠乗りに出かけたようでその帰りに倒れたそうなんです」
「嘘でしょ?」
 彼女は結構健康体だったはずだけど・・・
「そこまでは分かりかねます。ですが普段の調子からだとそれはまず無いとのアグスティ城のメイドさん達のお話です」
 うーん、分からないわね。
「それと私の推測ですが」
 シェリーは顔を赤らめてあらぬ所を向きながらボソボソッと何かを呟いていた。
「多分、エルトシャン様とノルン様は・・・きゃ!」
 どんな妄想しているのよ?
「ノルン私は我慢できない!貴方がどんな者であろうとも私は貴方を愛してしまった!!」
 あー始まったわね、シェリーの一人妄想劇・・・
「エルトシャン様!!それはできませぬ!!私に宿る闇の血がそれを許してくれませぬ!!」
「すると、ノルン貴方は!!」
「はい、私はロプトウス教の女司祭この国を教団の物にしようと企んでいました!でも
 私は貴方を愛してしまった。貴方に宿る光の血と私に宿る闇の血をその時どれほど憎んだか・・・」
「何故だ!!何故私は貴方を愛してしまったのだ!!」
「それもまた宿命でございましょう、哀しき闇と光の・・・」
「だが俺はもう貴方がいないと生きていけない!!」
「私も貴方がいないと生きていけません!!」
「ならば迷うことない!!一生俺はノルン君を護る」
「その言葉信じてもいいのですね?」
「ああ、信じてくれ!信じられぬのならばミストルティンで俺を斬れ!!」
「そんな事出来るわけ無いじゃないですか!!」
「そうだな・・・」
「エルトシャン様、私を抱いて下さい。この愛を永遠の物にするために」
「ああ、分かったあなたへの愛をこのミストルティンに誓う!」
 この馬鹿らしい妄想劇を止めるために私は彼女突っ込み専用武器とーるはんまーう゛ぁーじょん2.5をかざし彼女に見舞った。 

 ごしゃ!!

「いたーい、何するんですかラケシス様!!」
「妄想劇はそこら辺にして欲しいのだけど?よろしいかしら?」
「は、はひ、なんでしょうか?」
「ノルンさんは?」
「ベランダで星を見ていらしてます」
 随分とロマンチストな方なのね。
「ありがとう、早速行かせてもらうわ」
「何しに行くんですか?」
「ライバル宣言よ」
 私はにっこりシェリーに微笑んでから部屋を出ていった。

 夜 ノディオン城 ベランダ

「ここにいらしたのね?ノルンさん」
「あら、ラケシス様何のご用でしょうか?」
「貴方、エルトお兄様の事好きなの?」 
「ええ、好きだと思いますわ」
 うむむむやっぱり
「それじゃ私とノルンさんはライバルですね」
 その言葉を聞くとノルンさんはほぇっとした表情で首を傾げる
「あら何のライバルですか?」
「恋のライバルです!!」
 するとノルンさんはぽんと手を叩くと
「ああ、そう言うことでしたのでしたら、違うかも知れませんわ」
 え?それって一体・・・
「ふふ、分からないという顔をしていますのね、私はエルトシャン様を好きだと思いますけど今はお慕いしていませんわ」
 え?それって訳が分からない。
 私はお兄様が好き、ノルンさんもお兄様が好き・・・なのに?
「どう言う事?」
「ラケシス様の『好き』と私の『好き』は違うんですよ」
 違う?どう違うの?
「愛という言葉には色々あります。母性愛に慈愛、敬愛そして兄弟愛。ラケシス様の愛は一体何の愛なのですか?」
 それは私にも上手く言えない、私はエルトお兄様が好きだでもそれは異性として愛しているのか、それとも・・・
 兄として愛しているのか?
 まったく分からない・・・
「私の好きはきっと弟として好きなのだと思いますわ、今わね」
「そうですか・・・」
「まぁ、まだ人生は始まったばかりですから」
「ねぇ、ノルンさん」
「何でしょうか?」
「兄姉は?」
「兄が二人」
「好きだった?」
「ええ、『兄』として」
「どんな人だった?」
「一番上のお兄様は例えるならば『風』ですわね」
「かぜ?」
「ええ、考えていることは大人で大人としての責任を取る事、自由の意味を理解していてそれでいて子供っぽい人」
「ふふ、エルトお兄様とは全く逆ね」
「そうですわね、でも・・・私の国では勝てない人はいなかった」
「そんなに強いの?」
「ええ」
「もう一人のお兄さんは?」
「優しい人で例えるのなら、たき火の炎みたいな人」
「たき火の?」
「ええ、人を暖めて、人を導く、そんな事が出来る人」
「ふーん、なんか他のお話ししてよ」
「あら?いいのですか?恋のお話は」
「うん・・・ノルンさんの話し聞いたらわからなくなって」
 私は兄としてエルトお兄様が好きなのか・・・
 それとも別のなにかとして好きなのか・・・
「そうですか、まぁいいでしょう、どんなお話が良いですか?」
 今はその思考を打ち切って、ノルンの話を聞こうと思う。
「ええと、英雄のお話とか」
「それでは1つの伝説を語りましょうか」

 1時間後

「となったわけです」
「ありがとう。とても面白かったわ」
「いえ、いえこちらも楽しませていただきましたから」
 え?
「何を楽しんだの?」
「ラケシス様の表情とか」
「え?私の?」
「ええ」
 でもそれって・・・
「私を子供扱いしているの?」
「いいえ、それはラケシス様の生まれ持った物として正当に評価しているだけです」
「???」
「ラケシス様は太陽のような美しさを持っていらっしゃるから」
 太陽?
「太陽?あのお昼に出ている?」
「ええ、その太陽です。ラケシス様はその持ち前の明るさで人を惹きつけ、そして温もりを与える」
 成る程ね・・・
「だったらノルンは月ね」
「月・・・?ですか」
「ええ、だって月夜の闇は人を優しく包み込み、安息を与えてくれる物でしょ?
 月自体は神秘の象徴だからミステリアスなノルンにはお似合いだと思うけど」
「ふふ、確かに」
「ねぇノルン」
「何ですか?」
「友達になってくれないかしら?」
「友人ですか?」
「うん」
 私はベランダの手すりに座って話し始める。
「私ね、同等で話が出来る女の子いないんだ」
 私はお兄様の異母兄弟で望まれて生まれてきた訳ではなかった。
 幼い頃、お父様とお兄様のお母様と私のお母様が死んだ後、
 ノディオンの跡目を狙ってお兄様と自分の娘と政略結婚してノディオンをのっとろうした人もいた。
 その事を察知したイムカお爺様は自らの管理下に入れてそれを防ぐと今度は私に10や20も離れた男たちが私に寄ってきた。
 それから自分で身を護るため、お兄様に迷惑をかけないためにそうやってきた。
「だから?」
「うん、駄目?」
「ラケシス様は友人がほしいのですか?」
「うん・・・お兄様がねグランベルの士官学校に行くんだけど学校に見学に行ったときねお友達を作ったんだって、
 シアルフィの公子様とレンスターの王子様」
「それはいい事ですね」
「それでね、見てきた後お兄様が言ったの、『お前も友人の一人ぐらい作ってみたらどうだって』」
 そういわれてもきっと私は同い年の女の子と友達になることは出来ないと思う。
 私はきっと人の暗い部分を同じ年代の子よりも沢山見ているから・・・
 だからこそ、その暗い所を上手に接する事が出来るノルンと友達に成りたいんだと思う。
 友情かもしかすると別の何かとして・・・
「わかりました。私でよろしければ・・・」
「ありがとう、ノルン」
 このありがとうが何かの始まりと信じて・・・


 続く

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