一羽の美しい鳥


今日、一羽ののそれはそれは美しい羽の鳥が悲しい目を据えて、安らぎを求め旅たった。
そのあまりに美しい羽と、その優しげで暖かい眼差しゆえに、 その身を時代という残酷な名の炎に引きずられ、 そしてたくさんの悲しみや叫びを彼女が通り過ぎるにつれて、 その優しげな暖かい眼はいつかは、欺瞞と偽りの眼に変わっていった。 でもその眼の奥底では彼女はずっと哭いていた
悲しげで孤独な紅い炎・・・その炎にいつしか魅入られた自分と、 そんな自分を諫める自分。そんな二人の自分が瞳の奥でずっとぶつかり合いながら、 結局はその美しい鳥はその時代の炎に身を委ねてしまった
・・・・いつしかたくさんの悲しみや叫びがついに彼女の美しい心や 優しげな瞳をもメチャクチャにしてしまった。 そして彼女は、いや彼女の心は行き場を失い、どこに行けばよいのかも分からず、 戸惑いさまよい続けた
そして行く先を見失った美しい鳥はいつしか、安らぎを求めるために、 炎の中から旅だって行った
そして今日その美しい鳥は悲しい運命を嘆き、 そして過去の己の弱さへの悔恨を残しながら、 その美しい羽のまま安らかな世界へ旅たっていった
何年かしたらその美しい鳥の体は朽ちて、 そしてその暖かな土から彼女の羽よりももっと美しい花を咲かせた。
そこにあったのは彼女をあれほど苦しめた悲しみや叫びではなく、 人々の何気ない暮らしだった。



 セリス(コメント by マルチくうねる)
 こちらは、ペタジーニの嫁様から投稿していただいた作品です。
 詩、というより、SS(ショートショート)と言うべきでしょうか。

 「炎」をキーワードに、淡々と、美しく仕上げた叙事詩といった風情が印象的です。
 「時代の炎」「波」「羽」「花」といった、 自然事物に即した実にカラフルな描写が美しいなと思います。
 鳥の正体は、おそらく…イシュタルではないかと。


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